交通事故に強い広島の弁護士の徒然日記

検察庁法改正案は社会の重大な「バグ」になる

今,検察庁法改正案について日本国民の間でも相当な議論になっています。

 

まず,一人の弁護士として社会に主張しておかなければならないことは

 

この法案が可決されれば,日本の統治機能に重大な「バグ」を作り上げる

こととなることは間違いないということです。

 

この問題の根幹は検察官の「定年延長」そのものではありません。

 

「内閣や法相の裁量」で「検事総長ら幹部がポストに残ることができる」と

いう仕組みそのものが大,大問題なのです。

 

私は検察官の職に就いた経験はありませんが,司法試験合格後の修習の際,

検察庁の内部を一部見せていただきました。

その際に感じたことは,個々人で動いている弁護士とは全く異なり,「組織

で動いている多くの検察官やその職員がかなり出世を強く意識していた」

ということです。

 

出世を意識されるのは組織の人間としては当たり前の事であり,仕事のモチ

ベーションになるので,それ自体は問題ありません。

 

ただ,検察庁の最上部のポストにこれまで以上に内閣の任命権限が強くなれば,

少なくとも出世を意識する中で検察庁全体で「内閣や与党政党に対する捜査権

を緩めることになりうる」ということは長い目で見て間違いありません。

日本の刑事裁判のスタートとなる起訴権限は検察官が独占していますので,

「裁かれるべき国家犯罪が刑事裁判にすらかけられない可能性が高くなる」という

ことの弊害は,必ず国民に跳ね返ってきます。

 

三権分立の趣旨は,国家権力の暴走を止めることにあり,その暴走を止めるべき

国家機関の際たるものは当然,権力の集中する「内閣」です。

 

その内閣が主導で,国民レベルでの議論を避け,統治機構に重大な「バグ」を作り

出そうとしていることは,到底許すべきことではありません。

 

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一般市民を「当事者」に巻き込んむN国党の問題点

NHKから国民を守る党(以下「N国党」といいます。)党首の

立花孝志氏が,以下の内容の動画を先週投稿しており,内容を

知って驚きました。

 

1.立花孝志氏が動画で示唆する訴訟内容の要旨

  動画内容をまとめると以下の内容となります。

.泪張魁Ε妊薀奪スさんの東京MXテレビでの発言が有権

 者に対する名誉棄損である

⇒権者はマツコ・デラックスさん及び東京MXテレビに対し

 て債権(損害賠償請求権のこと?)を有している。

M権者個々人が持っている債権を,立花孝志氏が設立する株

 式会社(以下「本件会社」

といいます。)に債権譲渡し,本件会社が代わって訴訟を行う

 

 

2.マツコ・デラックスさんの過去の発言内容

まず,東京MXテレビ「5時に夢中」でマツコ・デラックスさんが

発言している内容は,リンク先に全文が掲載されています。

https://seege.hatenablog.com/entry/2019/08/14/000000

 

この発言の内容で有権者について言及しているのは以下の2点

・(司会者にN国党の票数が伸びた一因を聞かれ)やっぱり,ひやかし

ひやかしじゃない

もちろん、だから受信料払うことに対して疑問を持っている、真剣に

そう思っている人もいるだろうけどなんか、ふざけて入れている人も

相当数いるんだろうなぁとは思う

 

以上です。

 

 

3.発言内容は名誉棄損にはならない

 この発言を見て,一般人は「単なる論評に過ぎない」ということを認識

できるはずです。そして,N国党に投票した人全体の名誉を棄損する発言も

ありません。先の参議院選挙でN国党に投票した有権者の名誉を棄損する

発言は一切ないといって良いでしょう。

 このような裁判に「債権譲渡」という形で参加しても得るものはありませ

ん。それどころか,下手をするとこの訴訟自体が「嫌がらせ目的の訴訟」とし

て認定され,これに加担した一般市民はマツコ・デラックスさんや東京MXテレ

ビから訴え返される可能性を僕は危惧します。債権譲渡して参加した一般市民

には「リスクしかない」と言わざるを得ません。

 

 また,付随的な話ですが,立花党首が考えるスキームは,訴訟信託の禁止

(信託法10条)に違反するでしょう。つまり,自分に成り代わって訴訟を遂

行する第三者に債権を譲渡して訴訟を行ってもらうことは大原則として法律が

許容していないのです。

債権回収会社として法務大臣から許可を受ければ別ですが,立花党首の動画

で説明しているスキームは実現困難でしょう。

 

 

4.関係のない一般市民を「当事者」として巻き込むN国党

 そもそもN国党が国民に広く周知をしているのが「NHK撃退行為」なる運

動です。

 いまいち定義が明確ではないのですが,動画等を見ていると,NHKから委託

を受けた職員が来た場合に受信契約の義務があっても契約をせずに追い返すこと

や,受信契約をしても受信料を不払いにすることを推奨する行為の様です。こうい

ったNHKの業務を妨害する行為の「推奨」に関する法的問題は先日別のブログ記事

で記載させていただきました。

 

 本来N国党と接点を持っていない一般市民に対し,「不当な事実行為・法律行為

を誘引」し,一般市民を「直接の当事者」として巻き込み「不当な事実行為・法律行

為」をさせるという特徴が,N国党にはあります。

 そして,マツコ・デラックスさんらに対する上記「債権譲渡」の誘引も,まさに何

ら関係のない一般市民を「(「原告」にはならないという意味で)実質的当事者」として

巻き込んだ「不当な事実行為・法律行為」と言えます。

 

 共同通信が先のスラップ訴訟について記事化しているけど,これって,もう重大な

社会問題なんじゃないの?

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「NHKから国民を守る党」の活動に異議 〜犯罪となる可能性を考察〜

「NHKから国民を守る党」(以下,「N国党」いいます。)が今年の

夏の参議院選挙で議席を獲得しています。

このN国党はかなり長い間,動画投稿サイト「ユーチューブ」に党首で

ある立花孝志氏自らがその活動を継続投稿し,インターネット利用者を

中心に支持を集めているようで,全国には同党所属の地方議員が存在す

る様です。

 

1.N国党の活動について

 N国党は,基本的活動として「NHK撃退シール」なるものを

頒布しています。この撃退シールには電話番号が記載してあり,この

番号に電話をするとNHKから委託を受けている業者が訪問した際に

追い返す方法を教えたり,場合によってはコールセンターを介して人

がやってきて委託業者の方を直接追い返したりしているようです。

 

 この様子は,ユーチューブ上で立花孝志氏が運営すると思われる

動画サイトに多数アップされており,中には無断で委託業者の方の容姿

を無断で撮影したり(!),逮捕(!!)に及ぶ動画も存在しています。

 

 そして,N国党はシールの配布だけでなく,インターネットを通じて,

広く国民に対して「NHKから委託を受けている業者を追い返す」こと

を推奨しています。

これらの活動はつまるところ国民に対して「NHKとの受信契約はしな

いように!」と推奨する行為となっていることは明らかです。

 しかし,NHKから委託を受けた業者は,基本的に法に従って受信設備

のある家庭に対し,受信契約をする業務を遂行しているだけであり,何ら

の違法行為は原則的に行っていません。

 

 

2.「NHK撃退」なる行為の推奨は犯罪になる可能性が高い

 N国党のこれらの行為をみて,多くの法曹関係者がまず考えるであろう

ことは,「刑法にある『業務妨害』に該当する可能性がある」ということ

です。

 法律解釈には法律家の中でも分かれることがあることを前置きしますが,

私は上記行為が「偽計業務妨害罪」(刑法233条)に該当する可能性が

高いと考えています。

 

 偽計業務妨害罪はゝ況廚鰺僂い董き⊃諭碧/佑盍泙燹砲痢き6般海鯔

害する場合に成立する犯罪です。

 

 どのような場合に「偽計」となるかですが,「人を欺き,あるいは,人の

錯誤・不知を利用したり,人を誘惑したりするほか,計略や策略を講じるな

ど,威力以外の不正な手段を用いること」とかなり広い定義となっています。

 

 彼らの活動は,国民に対して「受信契約はしないようにしましょう」と広報

しているに等しいわけですから,「人を誘惑」していますし,また「計略や策

略を講じている」とも評価できるでしょう。

 

 また,「業務を妨害する場合」という要件は「妨害の結果を発生させる恐れ」

があればよいとされています。そもそも適法に契約締結業務に来たNHK委託業

者を追い返し,その結果「受信契約を締結させないこと」を目的としているわけ

ですから,この要件も満たします。

 

 つまり,N国党のベースとなる活動である「NHK撃退」なる行為の告知は,

それ自体が刑法に定めのある「偽計業務妨害罪」に該当する可能性が高いのです。

 

 

 

3.「適正な議論・手続きを経ない実力行使」は,いずれ国民に跳ね返ってくる

 N国党の上記活動を支持する方には,NHKそのものに何らかの反感を持って

いる方が多いのではないでしょうか。

 

 しかし,その反感は,国民全体で議論をすることや,法律を改正して解消して

いくべきものです。

 

 そういった手続きを経ずに「実力行使」を許してしまう社会が広まれば,いず

れ国民それぞれが「心の中にある一つ一つ違う正義」を振りかざし,「違法な実

力行使が横行した社会」となのではないか,という危惧が僕にはあります。

 

 

4.最後に

 N国党がアップしている動画の中には,委託業者の方の容姿を無断で撮影した

り,中には委託業者の方を逮捕しているものも存在します。

 

 これらの行為も民事・刑事の責任が発生する可能性があります。N国党が告知し

ている番号に電話をし,「委託業者を撃退して!」と依頼される方は,「撃退行為

を依頼した自分自身も法的責任を負う可能性がある」ということを是非認識してく

ださい。

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衆議院はどのような場合に解散になるのか?

昨日、安倍内閣総理大臣から、9月28日の衆議院解散となり、10月22日に投開票と

なることが発表されました。

 

党内の議論もないのに…解散の大義、疑問の声は与党内にも(朝日新聞デジタル

 

今回の衆議院選挙は、既に多くの疑問が出ている通り、

 

「何で解散なの?」

「何で今選挙をやるの?」

 

という声が多いのが事実です。

 

では、そもそも、どの様な場合に衆議院は解散になるのでしょうか?

 

衆議院が解散となる条件は法律ではなく憲法が定めています。

 

その一つ目は、憲法69条による解散です。

 

内閣について不信任が決議され、または信任決議が否決された時に、

閣が10日以内に衆議院を解散できることになっています。

 

もう一つが今回の解散である憲法7条による解散です。

 

憲法7条3号には、「天皇が内閣の助言と承認に基づいて国会を解散できる」旨が

記載されています。

解散するために特段の制限はありません。

 

しかし、これまでの日本における衆議院選挙は、少なくとも

 

国民レベルで決めなければならない争点がある

 

ことが前提となっています。残念ながら、今回のように、今国民レベルで決めなければならない

争点はないはずです。

「今、解散をすれば、与党が勝てるから解散しちゃおう!」という解散は、憲法の文言上

直ちに違憲とは言えないですが、政治倫理的に歴代の内閣はこういう解散をしてこなかったこと

は事実です。

 

憲法をおもちゃの様に扱うことはいかがなものでしょうか…

 

 

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法科大学院の廃止・募集停止のニュースを見て思うこと

今朝、私にも関わるニュースが出ていました。

 

法科大学院、半数が廃止、募集停止

背景に政府の読み誤り(朝日新聞)

 

2004年以前の司法試験制度は、大学の単位を一定数取得していれば誰でも

受けられましたし、大学に入学していなくても司法試験を受けるための試験が

用意されていたため、受験者数もかなりいました。

 

しかし、現在は法科大学院に入学し、最低2年間は大学院で相当時間をかけて

授業を受け、卒業をしない限り司法試験を受けることすらできません。

法科大学院は全国に数が限られており、そのほとんどが都市部に集中してる

原状です。

 

法科大学院制度が失敗したことについては色々なメディアで既に述べられてきていますが、

そもそも、司法試験を受けてきた当事者として言えることは、

 

司法試験制度を支えてきたのは

 

受験生の自学・自習であり、大学や大学院の教員の授業ではない

 

という事実です。

 

受験生は、自学・自習を通じて法律の基本を習得し、授業ではそれを発展させた議論をする

場にしていました。

 

しかし、優秀な学生でも、大学や大学院で法律の基本部分をほとんど教えないため、法律の基礎

がのみこめないまま卒業を迎える学生も相当いたと思います。

 

何がいいたいかというと、

 

大学や大学院の教員は法律の基本を十分に教える能力のない方がとても多い

司法試験では法律の基本を聞いているのに、その大学や大学院の授業は司法試験には

殆ど対応していない

 

ということです。

 

しかし、法科大学院に進学すれば、膨大な時間を授業に費やすため、昔のように自学自習を

前提とした学習が十分にできなくなりました。

 

大学の法学部を野球で例えるなら、「まだ全く野球をやったことのない子供に、いきなり

フォークボールの投げ方を教える」という授業が私の出身大学である早稲田大学でも普通に

行われていましたし、それは結果として学生の実力にはほとんど反映されません。

 

教員に司法試験に対応した授業をする能力がほとんどないにも関わらず、2004年に全国一

斉に相当数の法科大学院を設置し、法律を学んだことのない学生も含め相当数の学生を入学さ

せたことはかなり問題があったと思います。

 

もし、法科大学院制度を今後も維持するのであれば、司法試験に対応した、法律の基本を意識

した授業をする能力を教員に身に着けさせることは必須ですし、それができなければあと10年

もすれば法科大学院制度は大失敗で終わる可能性すらあります。

 

仮に、これから司法試験を目指す学生さんがいるとしたら、時間を自由に使える大学時代の4年

間に法律の基本(簡単に言えば「要件」と「効果」)を意識した自学自習をしたうえで法科大学

院を受験すべきと思います。

 

※私の卒業した中央大学法科大学院では少なからず、法律の基本を意識した授業を行っていた教員

の方がおりました。私が卒業して時間が経っていますが、これらの熱心な教員の方の熱意が現在実

を結んでいることを願っています。

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